内容説明
北フランスの荒涼とした低地帯にある精神科病院を舞台に、若き日本人精神科医とその仲間たちが繰り広げる魂の群像劇。自らの留学体験をもとにした長篇デビュー作。芸術選奨新人賞受賞。
著者等紹介
加賀乙彦[カガオトヒコ]
1929年東京生まれ。小説家・精神科医。日本芸術院会員、文化功労者。主な著作に『フランドルの冬』(芸術選奨文部大臣新人賞)『帰らざる夏』(谷崎潤一郎賞)『宣告』(日本文学大賞)『湿原』(大佛次郎賞)『永遠の都』(芸術選奨文部大臣賞)『雲の都』(毎日新聞出版文化賞企画特別賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイトKATE
29
本書は加賀乙彦の長編デビュー作である。フランス北部フランドル地方の精神病院で働く日本人医師コバヤシと、一緒に働く医師たちの物語であるが、心の病を抱えた患者との交流はあまり書いていない。書いているのは、1950年代のフランスの精神病院と医師の様子や、コバヤシと恋人のニコルとの恋愛のもつれ、戦争で心を病んでいる医師クルトンとの生と死をめぐる対話である。デビュー作であるためか、物語の構成に散漫なところがあって面白くなかった。個人的に、同じくフランスを舞台にした次作『荒地を旅する者たち』の方が優れていると思う。2023/02/21