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内容説明
本書は中国漁船衝突事件、東日本大震災など国防の危機において自衛隊のトップを務めた折木氏が、やむにやまれぬ思いで綴った一冊である。氏は語る。「なぜあれほど聡明な日本人がこと安全保障に関しては、誤解を恐れずにいえば稚拙ともいえる議論しかできないのか」。なかでも安保法制を「戦争法案」だという声に、これほどまでに自らの身を捧げた活動が理解されていないのか、とむなしさすら覚えたという。戦後70年享受してきた平和をこれからも維持するためには、感情的な議論ではなく「相手からみた視点」が必要となるにもかかわらず。本書で折木氏が、中国はいま日本のことをどうみているのか、極東のパワーバランスを各国はいかに認識しているか、などの議論を行なうのは、まさにそのためである。新興国の台頭、「力の空白」を埋めるテロ組織……。「元統幕長の目」に、冷戦終結以降、ますます不安定化する世界情勢はどう映っているのか。そうした状況を踏まえてはじめて、集団的自衛権、日米ガイドライン改定、自衛隊の果たすべき役割についても議論のスタート地点に立てるはず。「昭和の自衛隊」と「平成の自衛隊」の違いとは何か。「いま研究すべきは、じつはアメリカだ」と折木氏がいう、その真意はどこにあるのか。安保法制に賛成の人にも、反対の人にもぜひ手にとってもらいたい、命を賭して国家に尽くした男が語る「戦争と平和」の本質。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
onasu
21
普段は「国」なんて、税金を取った挙げ句、無駄遣いばかりしやがって、くらいにしか思わないが、崩壊状態のイラクやシリア、自由が制限されている近隣国の状況を聞くと、現状では民主主義の「国」てのが、一番基礎の必要不可欠な枠組みだと気付かざるをえない。 そして、そういう大事なものを守るのは、当然私たちだし、私たちはそれだけの能力も有している。その辺りを人任せにせず、もう少し我が事として考えるようにせねば。 自衛隊元最高幹部が自らの思いを少しでも、という本書。やや散漫な印象はあるが、意気込みには敬意を表したい。2015/12/05
ひろし
14
陸海空の幕僚長の上に立つ、制服組のトップである元統合幕僚長が安全保障、自衛隊について語ってくれている。日本の現状を知り、アジア・中東・EUの情勢を知り、同盟国であるアメリカを知る。その上で相手の立場になって考えることによって見えてくる事実を積み上げて議論することが大事とのこと。パワーを無視し、世界情勢を知ろうともしない人が雰囲気で大声を張り上げている今の日本の現状に改めて危機感を覚えた。とても分かりやすく、読みやすいので安保についてちょっと考えてみようかなと思われた方にはちょうどいいかと。2015/08/19
白義
13
東日本大震災でも活躍した元統幕長が語る、トータルな日本の安全保障の現状と課題を示した一冊。中国の長期的な海洋進出、急激な海軍力の増大、火薬庫としての朝鮮半島などリスクが高まり続ける極東情勢を整理し、基礎的な安全保障思想の確立、国際協力、国民により愛され、機能する自衛隊のあり方など今後重要性を増す分野をさすがに深い見識で論じていてこの分野の新書としてはかなり出来が良い。中国中心の地図から見た日本列島の位置、シーレーンの要となるチョークポイントの配置などから見ても対中国戦略のあり方は長期的に最重要となりそうだ2017/06/24
おっくー
10
本屋で見かけて購入した本。現在の日本の安全保障について書かれていた。朝鮮半島のはアジアの火薬庫と表現されており、先週の突発的な軍事衝突はかなり衝撃を受けた。やはり、正しく、安全保障を理解していない人たちの発言には矛盾しており、建設的な議論にならない。したがって、安全保障に興味を持ち、様々な人が勉強するべきだと思う。2015/09/05
ぷれば
8
陸海空自衛官の最高位、統合幕僚長だった著書が語る国防。国内世論を二分し、戦争法案、軍靴の音がする等、連日批判にさらされながら成立した「集団的自衛権」。日米協力のあり方、安全保障の究極目標である自由度の確保、安倍政権の「積極的平和主義」の先にある「真の自立」など、200頁ほどの新書ながら、真摯かつ濃縮された国防論が詰まっている。背筋を伸ばして向かい合いたい良書。2015/10/23