内容説明
江戸は浅草川に浮かぶ島、箱崎の小さな船宿「若狭屋」を切り盛りする女将のお涼。彼女は父親譲りの見えてしまう体質で、その面倒見の良い人柄からか、あやかしたちの世話をつい焼いてしまうのだった。探し物をしている片目片足の小僧、小さな蹴鞠の神様たち……。人間以外のお客が今日もまたお涼の元をふらりと訪れる。あの世とこの世をつなぐ不思議な船宿を舞台に贈る、愛おしくてあたたかい、あやかし奇譚。好評シリーズ第2弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nico🐬波待ち中
105
匂いや音色等、忘れ去られた記憶を蘇らせるものに人はつくづく弱く、心揺さぶられてしまうもの…。見えないモノが見える、不思議な力を持つお涼の周りで起こる摩訶不思議な物語の続編。この世とあの世を行き来する妖しいモノ達がお涼の元に引き寄せられるようにやって来る。第2弾も前回に負けず劣らず、ほのぼのとしたり切なくなったり。チャキチャキの江戸っ子のお涼の気っ風の良さが心地好い。今回はお涼の父親・甚八の話にも泣けた。折口さんの描く「あやかし奇譚」はいつも優しい気持ちにさせてくれて外れなし。第3弾もぜひ書いてほしい。2019/03/24
真理そら
78
『おっかなの晩』の続編。だが時系列が入り乱れているので、これを読んでからもう一度『おっかな~』を読むと楽しいかもしれない。「小正月と小僧」は小道具?のヤマネがかわいい。一見普通の少年少女の話のようで妖しい「約束」が好きだ。お涼の不思議さを知っても動じない吉弥が好ましい。お涼は祖母の志乃、父の甚八と同様「みえる」体質だけれどその体質をおおらかに受け止めて生きているのが頼もしくて好きだ。2019/10/21
はる
77
寡作な作家さんなので新作が読めるのは嬉しい。前作はほとんど覚えていなかったけれど、問題なく楽しめました。あやかしたち、この世のものならぬものたちとの物語ですが、あくまで描かれているのは人の情。そのあたたかさ、誠実さが折口さんの魅力。ただ今作は物語の芯がはっきりしないせいか、やや中途半端な印象です。登場人物は魅力的で、その真摯な生き様はとてもいいのですが…。独特の雰囲気が好きな作家さんなので、もっといろいろ読んでみたい。2019/03/18
アルピニア
69
シリーズ第二巻。登場人物の過去が語られる話が多い。甚八さんとお涼さんの「見える」力の由来も明らかになる。この巻も、ふともうひとつの世界と繋がったり、逝ってしまった人が導いてくれたりと不思議なものと自然に交わる雰囲気が心地よい。どの話もしんみりとした読後感で良かったが、「約束」「常世の夜」「鹿屋野比売神」が特に心に残った。銀次さんのように、見える力はなくても草木や人ならぬもの、見えないものの力を感じてその力と繋がって生きていきたいなぁと思う。2019/03/08
ポチ
61
全編を通して流れる優しさや儚さが、妖や不思議とうまく調和していて、とても良い読後感を味合わせてくれる。もっと読みたいです。2019/04/24