内容説明
南アフリカ出身の母親と日本人の父親との間に生まれたダブルの少年・ジェリコは、小学校でいじめに遭ってから不登校になり、VRドローンレースにのめり込む。しかし、出場していたイスタンブールでのレースの最中に制御を奪われた彼のドローンが爆弾テロに使用されてしまう……。日本に居られなくなったジェリコは、母の遠縁を名乗る男性・マルグッドに導かれて、ミャンマーとタイの国境地帯にある小さな村に潜伏することになった。そこで出会ったのは、芥子を栽培する少女のリィ・レイと、ドローンを「歌」でコントロールする「ミツバチ」の女、ノーンとプロイだった。やがてジェリコは、自分と同年代ながら「戦争」「貧困」「ブラックビジネス」に向き合う少年少女たちと触れ合う中で、残酷過ぎる世界の真実を目の当たりにしていく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rosetta
35
個人的に今年のNo.1だった『天使と石ころ』が良かったので過去作を。これも良かった。共通するのは子供を戦争の道具に使う大人たちの欺瞞。リアリスティックな『天使』と違いこちらはSF。脳を加工し特別なハミングを唄い、コーティングされた日傘でそれを増幅しドローンを操る。表紙からも想像できるがアニメにでもしたらとても映えそう。端正でありながらリーダビリティの良い文体で悲惨な事態を美しく描写する。読みながら『バイオレットエバーガーデン』の絵柄がずっと浮かんでいた。この作家さんがもっと注目されて欲しいなあ2024/10/31
緋莢
19
<鈍色の日傘を持ちドローンを監視する彼らは〝ミツバチ”と呼ばれている。ドローンが雄ミツバチを意味することに対して付けられた渾名だ。>小学三年生の時に、クラスメイトたちが急に「ガイジン」と言い出し、不登校になってしまったイェリコ。世界的なドローンレースに遠隔操作で参加するも、レース中に起こった爆弾テロの疑いをかけられてしまう。ネット上に個人情報をさらされたイェリコは、母の遠縁の親戚のマルグッドと出会い…(続く2023/11/03
ヌーン
5
朱く、悲しい、どうしようもない世界の話でした こんな非情な世界で「戦争をしないと決めている国」だけが無傷でいられると思う?2024/12/23
只今小説熟読中
3
装幀に惹かれました。 所々の描写が美しいのが却って残酷さを際立たせていて、苦しみを傍に読んでいました。 子供は無邪気で、そうあって、そうであって欲しいと願いつつ、何が正しいのか誰にも分からないんだなと思いました。2023/07/27
corriedale_
2
最近のガンダムというか、SFアニメにありそうな"映える"生体兵器とドローン操縦者の少年。仕組まれた紛争、児童人身売買、無人戦闘機と情報制御、平和。退屈で陰気な戦争の無い国として描かれているのが意外。2023/08/15