内容説明
いつか田舎の村を出て上京し、自分の人生を切り拓くことを夢見る天。天の幼馴染で、彼女に特別な感情を抱く藤生。その藤生を見つめ続ける、東京出身で人気者のミナ。佐賀の村で同級生だった3人は、中学卒業前、大人になったそれぞれに充てた手紙を書いて封をした。時は流れ、福岡でひとりで暮らす30歳の天のもとに、東京で結婚したミナから、あの時の手紙を開けて読もうと連絡が来て――。他者と自分を比べて揺れる心と、誰しもの人生に宿るきらめきを描いた、新しい一歩のための物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
155
「どうしてわたしはあの子じゃないの」、と読者に問いかける書名を冠したこの作品。そこには、モヤモヤとした思いに囚われ続けてきた天の人生の一つの区切りを見る物語が描かれていました。『どうしてわたしは、あなたじゃないの』。そんな思いに囚われる中に中学時代の日々を生きていた主人公の天。佐賀県に伝わる『天衝舞浮立』という『神事芸能』が印象深く描かれるこの作品。視点の絶妙な移動によって、登場人物それぞれの心の内が鮮やかに浮かび上がるこの作品。他人を羨むという誰にでもある感情を鮮やかに描き出す寺地さんらしい作品でした。2024/11/15
せ~や
48
図書館本。昔から、「すごいな。なれないな」と想い続けてた親友がいる。大人になってそんな話になって、「せーやこそすごいよ。俺には出来ない」と親友から言われた。天、ミナ、藤生の3人それぞれから見た日常。自分は否応なく、このどうしようもない「自分」を生きていかなきゃいけない。でも、誰かの視点から見れば、そんな「自分」を「すごい」と言ってくれる人もいる。「どうしようもない自分」と「すごいと言われる自分」…どちらの「自分」にも「はじめまして」と握手して、手を取って、これからを生きていけたらいいなと思う。☆5.02025/03/20
エドワード
45
相変わらずの九州男児の肘差村の物語。中学校の同級生、小湊雛子、吉塚藤生、三島天(女子)の14歳の過去と30歳の現在が交差する。村の名士の家柄の雛子、かっこいい藤生、家と村の全てを嫌悪する天が、16年ぶりに再会する。雛子→藤生→天という好意の残酷さ。中学生の目に映る、矛盾だらけの田舎の嫌らしさ全開だ。父に殴られ、母に書きためたノートを捨てられ、天は村を出ることを誓う。雛子にも藤生にも悩みはつきない。14歳の時に三人で互いに書いた手紙を読むために故郷へ戻る天と雛子。大人になった三人の明るい未来を祈るよ。2024/04/01
ω
43
audibleにて聴了。 よかった。私も田舎で育ったので、「逃げたい」というのがよく分かる、、、、 初めての作家先生だけどとても好きな感じだったので、本で読めたら良かったかなぁと思いながら、月額で隙間時間に聞けるんだから今後もaudibleしちゃうけども……ω2024/03/18
よっち
39
閉塞的な家や村から逃げだし、身寄りのない街で一人小説を書き続ける三島天。ある日中学時代の友人のミナから連絡をもらい、藤生を含めた幼馴染三人で久しぶりに再会する物語。強権的な両親に押さえつけられて早く家を出たいと思っていた天、そんな彼女を気にかける藤生の複雑な想い、天と一緒にいて自分というものを持っていないことを痛感していたミナ。それぞれが満たされない想いを抱えていて、自分は自分でしかなくて、大人になって変わったこともあるけれど、一方で変わらないものは変わらない三人のそれぞれのありようが印象的な物語でした。2023/11/16